104.6 レッスン 1

ハードリンクを作成するコマンドは ln です。次のように実行します。

TARGET にはすでに存在しているファイル（リンクが指し示すことになるファイル）を指定します。LINK_NAME には作成するリンクの名前を指定します。TARGET も LINK_NAME も、カレントディレクトリではない場合には、フルパスを指定します。例えば次のようなコマンドです。

このコマンドは、カレントディレクトリにある target.txt へのハードリンクを、/home/carol/Documents/ ディレクトリ内に hardlink という名前で作成します。

第二引数（LINK_NAME）を省略すると、パス名を除いたターゲットと同じ名前のリンクをカレントディレクトリに作成します。

ハードリンクを作成することは、TARGETと同じinodeを指す、LINK_NAMEというディレクトリエントリを作成することです。ディレクトリの実体はそのディレクトリ内に存在するファイル名とinodeの対応表であり、そのようにしてinodeと対応づけられるファイル名のことをディレクトリエントリと呼びます。作成したハードリンク（LINK_NAME）と元のファイル名（TAREGT）は、異なるディレクトリ内に存在しているとしても、同じinodeを指し示すことになります。ハードリンクからでも元のファイル名からでも、同じinodeのファイルを指すのですから、そのファイルの内容が変更されます。ハードリンクを削除しても元のファイル名を削除しても、残っているほうの名前からそのファイルを参照できます。

ファイルを「削除」するときには、データが実際にディスクから消去されるわけではなく、ディスク上のデータに対応するinodeを指すディレクトリエントリが削除されます。同じinodeを指す別のディレクトリエントリ（ハードリンク）があれば、データにアクセスできるのです。いわば三叉路（Y字路）のようなものであり、同じ地点に向かう一つの路を塞いだとしても、もう一つの路からたどり着けるというわけです。

ls に -i オプションを指定して実行すると、このことを確かめられます。以下の例を見てみましょう。

パーミッションの前に表示されている数字がinodeです。hardlink と target.txt の両方とも同じ数字（3806696）です。これは一方が他方のハードリンクだからです。

上記の例ではファイル名から区別できるように見えるかもしれませんが、実は、どちらが元ファイルでどちらがハードリンクかを区別できません。どちらも仕組みとしてはまったく同じものなのです。

ハードリンクを作成すると リンク数 が増えることにも注目してください。リンク数は、ls -l を実行するとパーミッションの直後に表示される数値のことです。ファイルを作成したときの値は 1（ディレクトリを作成したときの値は 2）で、ハードリンクを作成するたびに1ずつ増えます。そういうわけで、上記の例ではリンク数が 2 になっています。

シンボリックリンクとは異なり、（ディレクトリのループが発生しうるため）ディレクトリを指し示すハードリンクを作成することはできません。また、（inodeはファイルシステムごとに決まるため）ターゲットと別のファイルシステム内にハードリンクを作成することもできません。

ハードリンクは通常のファイルと同じように扱われますから、rm コマンドで削除でき、mv コマンドで名前を変更したり移動させたりできます。ハードリンクは、ターゲットと同じinodeを指していますから、リンクを壊すことなく移動させられます。

ln コマンドに -s オプションを指定すると、シンボリックリンクを作成できます。例えば次のように実行します。

このコマンドは、/home/carol/ ディレクトリにある target.txt ファイルを指し示す、softlink という名前のシンボリックリンクを /home/carol/Documents/ ディレクトリ内に作成します。（訳注：カレントディレクトリ以外にシンボリックリンクを作成する場合、TARGETをフルパスで指定するのが原則です。理由は後で説明しています。）

ハードリンクを作成するときと同様に、第二引数を省略すると、パス名を除いたターゲットと同じ名前のリンクをカレントディレクトリに作成します。

シンボリックリンクはファイルシステム内のパスを指し示します。ファイルだけでなくディレクトリを指し示すシンボリックリンクを作成できますし、別のファイルシステムのファイルを指し示すこともできます。ls コマンドの出力でシンボリックリンクはすぐにそれとわかります。

上の例では、softlink ファイルのパーミッションの最初の文字が l なので、シンボリックリンクだとわかります。さらに、ターゲット（target.txt）を指していることが、ファイル名の後に矢印（->）で示されています。

ls -l の実行結果で、シンボリックリンク自体のパーミッションは所有者・所有グループ・その他とも常に rwx になりますが、実際にアクセスできるかどうかはターゲットのパーミッションによって決まります。

ハードリンクと同様に、シンボリックリンクも rm コマンドで削除して、mv コマンドで名前を変更したり移動させたりできます。ただし、シンボリックリンクを移動させる際には、リンクが壊れてしまわないように注意する必要があります。

シンボリックリンクを作成するときにターゲットの場所をフルパスで指定しなければ、シンボリックリンクが置かれたディレクトリからの 相対的な パスだと解釈されます。そのため、シンボリックリンクないしターゲットを移動させると、リンクが壊れてしまいます。

具体的な例で考えましょう。original.txt という名前のファイルがカレントディレクトリにあります。次のコマンドを実行して、softlink という名前のシンボリックリンクを作成します。

ここまでは何も問題ありませんね。ls コマンドで確認します。

矢印（->）で示されているように、softlink が original.txt を指しています。このリンクを一つ上の階層（親ディレクトリ）に移動させ、そのリンクが指す内容を less コマンドで表示させようとすると、以下のようなエラーになります。

original.txt のフルパスを指定していなかったため、リンクと同じディレクトリにある original.txt を指すリンクを作成していたのです。softlink を一つ上の階層（親ディレクトリ）に移動させたので、リンクと同じディレクトリに original.txt ファイルはもはや存在しません。だからリンクが壊れてエラーになったのです。

移動させたときにリンクが壊れてしまわないようにするには、ターゲットをフルパスで指定します。

このようにターゲットのフルパスを指定して作成すると、シンボリックリンクをどこに移動させても壊れずにターゲットを指し続けます。（訳注：最初の例でTARGETをフルパスで指定した理由も同じです。ここでは説明のためにカレントディレクトリに作成したリンクをわざわざ移動させてリンクが壊れることを示しましたが、シンボリックリンクの指し先が それが置かれたディレクトリからの相対パス として解釈されることに注意すれば、相対パスで指定しても構いません。）

ls コマンドで確かめてみます。