4.1 レッスン 1
Certificate: |
Linux Essentials |
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Version: |
1.6 |
Topic: |
4 Linuxオペレーティングシステム |
Objective: |
4.1 オペレーティングシステムの選択 |
Lesson: |
1 of 1 |
はじめに
自宅でも、大学でも、企業内でも、コンピュータシステムを使用する場合には、そのオペレーティングシステムを決定する必要があります。個人用コンピュータの場合であれば、自分で選択すればよいのですが、企業用システム全体で選択する責任が生じることもあります。 責任ある決定を行うためには、利用可能な選択肢について、常に十分な情報を得ておくことが必要です。このレッスンは、選択肢として検討するであろうオペレーティングシステムに関する情報を提供することを目的としています。
オペレーティングシステムとは何か
オペレーティングシステムを選択する作業にとりかかる前に、そこに出てくる用語の意味を理解しておく必要があります。オペレーティングシステムはコンピュータの中心に位置し、その上でアプリケーションを実行できるようにします。さらに、オペレーティングシステムは、コンピュータに備えられた画面、キーボード、ディスクおよびパーティション、ネットワークカードなどのハードウェアにアクセスするためのドライバーを含んでいます。オペレーティングシステム(operating system)のことを、OS と省略することもよくあります。今日、ビジネス用コンピュータとしてだけではなく、家庭で調べ物をするためにも利用できる多くのオペレーティングシステムがあります。選択を簡単に行うために、グループ化を行っておきましょう。
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Linuxベースのオペレーティングシステム
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企業向け(エンターブライズ)Linux
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一般向け向けLinux
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UNIX
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macOS
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Windowsベースのオペレーティングシステム
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Windowsサーバー
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Windowsデスクトップ
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Linuxディストリビューションの選択
Linuxのカーネルとディストリビューション
Linuxディストリビューションと言えば、オペレーティングシステムは当然Linuxです。Linuxとは カーネル(kernel)のことであり、すべてのLinuxディストリビューションの中核です。Linuxカーネルのソフトウェアは、Linus Torvalds(リーナス・トーバルズ)が率いる個人グループによって管理されています。トーパルズは Linuxファウンデーションに所属し、Linuxカーネル開発に従事しています。
Note
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Linuxカーネルは、フィンランドの学生であったLinus Torvaldsによって1991年に開発されました。1992年にはGNU一般公衆使用権許諾バージョン2 (GPLv2)の下で、最初のカーネルがバージョン0.12がリリースされました。 |
- Linux カーネル
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繰り返しますが、すべての Linux ディストリビューションは、同じオペレーティングシステムである Linuxを実行します。
- Linux ディストリビューション
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Red Hat LinuxとかUbuntu Linuxとか言った場合には、Linuxディストリビューション を指しています。Linuxディストリビューションには、Linuxカーネルと、そのカーネルと対話しながら便利に使用するための環境が含まれています。少なくとも、Bashのようなコマンドラインシェルと、システムにアクセスして管理するための基本的なコマンドが必要です。もちろん、Linuxディストリビューションには、GnomeやKDEといったデスクトップ環境が含まれているのが普通です。
それぞれのLinuxディストリビューションは、Linuxオペレーティングシステムを実行していますが、利用しているバージョンは異なることがあります。そのため、使用しているLinuxカーネルのバージョン が、ディストリビューションのブート時に表示されます。
Tip
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Linuxコマンドラインにアクセスできるのであれば、カーネルリリース を読むことで、実行中のLinuxカーネルのバージョンを簡単に知ることができます。 $ uname -r 4.15.0-1019-aws |
Linuxディストリビューションの種類
常にLinuxカーネルの最新バージョンを実行すればよいと思うかもしれませんが、それほど簡単なことではありません。Linuxディストリビューションは、概ね3種類に分類できます。
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企業向けのLinuxディストリビューション
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Red Hat Enterprise Linux
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CentOS
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SUSE Linux Enterprise Server
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Debian GNU/Linux
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Ubuntu LTS
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一般向けのLinuxディストリビューション
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Fedora
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Ubuntu 非LTS
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openSUSE
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実験的なハッカー向けLinuxディストリビューション
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Arch
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Gentoo
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もちろん、これらは可能なディストリビューションのごく一部にすぎません。重要なのは、ディストリビューションにおける、企業向け、一般向け、実験的 の3種類の違いと、それらが存在する理由です。
- 企業向けLinux
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CentOS(Community ENTerprise OS)などのディストリビューションは、企業向けハードウェアを大規模な組織内に展開すること想定して設計されています。大企業のニーズは、中小企業や家庭ないし愛好家のニーズとは大きく異なります。サービスの可用性を確保するために、企業ユーザーは、ハードウェアやソフトウェアの高い安定性を求めます。そのため、企業向のLinuxディストリビューションでは、確実に動作することが知られている古いバージョンのカーネルやその他のソフトウェアを使用する傾向があります。これらのディストリビューションでは、(最新版における)セキュリティ対策などの重要な更新を、それらの安定したバージョンに「戻す」こともよく行われています。その代償に、企業向けLinuxディストリビューションでは、最新ハードウェアに対するサポートを欠き、古いバージョンのソフトウェアパッケージしか提供されていないことがあります。一般向けのLinuxディストリビューションでも同様ですが、企業は成熟したハードウェアコンポーネントを選択して、安定したソフトウェアバージョンの上に、そのサービスを構築するのです。
- 一般向けのLinux
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Ubuntuなどのディストリビューションは、中小企業や家庭、趣味のユーザーを対象としています。そのため、一般向けシステムに見られる最新版のハードウェアも使用できることが多くなっています。成熟したソフトウェアとハードウェアを必要とする企業向けシステムとは異なり、そのようなシステムでは新しいハードウェアの多くをサポートする最新版のドライバーが必要です。一般消費者向けの市場では、テストが不十分であったとしても最新のドライバが組み込まれた最新のカーネルが適当です。より新しいLinuxカーネルであるほど、実際に使用されている最新のハードウェアをサポートした最新のドライバを含んでいます。特に、開発を含めたゲーム市場においては、最新版のドライバが使用できることが非常に重要です。
Note
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Ubuntuなどいくつかのディストリビューションでは、最新のソフトウェアを含み、比較的短い間隔でアップデートを受け取る一般向けバージョンと、LTSと呼ばれ企業環境向けに適した長期サポートバージョンの両方が提供されます。 |
- 実験的なハッカー向けLinuxディストリビューション
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Arch LinuxやGentoo Linuxは、最先端のテクノロジーを採用しています。バグや未テストの機能があったとしても、最新バージョンのソフトウェアを搭載しています。これらのディストリビューションでは、「ローリングリリース」といって、常時アップデートを配信する方法を採っています。このようなディストリビューションは、最新版のソフトウェアには問題があることを納得し、その場合には自力でシステムを修復することができる上級ユーザーに使われています。
つまり、オペレーティングシステムとしてLinuxを検討する場合、サーバーやデスクトップに大企業向けのハードウェアを使用するのであれば、企業向けLinuxディストリビューションと一般向けのLinuxディストリビューションのどちらでも使用することができます。一般向けのハードウェアを使用する場合で、特に最新の革新的なハードウェアを使いたい時は、ハードウェアに応じたLinuxディストリビューションを必要とすることがあります。
いくつかのLinuxディストリビューションは、互いに関連し合っています。例えば、UbuntuはDebian Linuxをベースにしていて、同じパッケージシステム、すなわちDPKGを使用しています。別の例で、FedoraはRedHat Enterprise Linuxのテストベッドであり、RHELの将来のバージョンに取り込まれる可能性がある機能を、企業向けディストリビューションで使えるようになる前に調査することができます。
ここで紹介したディストリビューション以外にも、他にも多くのLinuxディストリビューションがあります。Linuxがオープンソースソフトウェアであることの利点のひとつは、多くの人々がLinuxのあるべき姿を考えて制作できることです。そのため、何百ものディストリビューションが存在します。より多くのディストリビューションを見るには、 The Distro Watch のWebサイトが参考になります。Webサイトの管理者は、Linuxディストリビューションのダウンロード100選を掲示しており、現在人気のあるものを比較、検討することができます。
Linuxサポートのライフサイクル
企業向けLinuxディストリビューションのサポート期間は、想像通り、一般向けやコミュニティ向けのLinuxよりもものよりも長くなっています。例えば、Red Hat Enteprise Linuxのサポート期間は10年間です。Red Hat Enterprise Linux 8は2019年5月にリリースされましたから、ソフトウェアのアップデートとサポートは2029年5月までとなります。
一般向けのディストリビューションでは、フォーラム(掲示板)でのコミュニテイサポートのみの場合があります。ソフトウェアのアップデートは、3回のリリースが行われるまで提供されることが多くなっています。Ubuntuを例に取ると執筆時点での最新版は 19.04で、19.10がリリースされるまでのアップデートがあり、2020年1月に終了します。Ubuntuには、LTS という長期サポート版があり、最初のリリースから5年間のサポートが提供されます。現在のLTSのバージョンは18.04であり、2023年まではソフトウェアの更新が行われます(訳注: 2020年4月に20.04 LTSがリリースされ、2025年4月までサポートされます)。LTS版が存在することと、Canonical(Ubuntuブランドのバックにいる会社)や独立したコンサルティング業者からの商用サポートが利用できることから、企業向けにUbuntuを使用してもよいでしょう。
Note
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Ubuntuディストリビューションでは、日付 YY.MMに基づくバージョン番号を使用しています。例えば、バージョン 19.04は、2019年4月にリリースされました。 |
Linuxのデスクトップ
商用オペレーティングシステムで提供されているようなデスクトップのサポートを期待している企業では、デスクトップシステムとしてLinuxを使うことが難しいかもしれません。サポートだけが難しいのではありません。企業の顧客は、特定のデスクトップ用オペレーティングシステムと結びついたソフトウェアに多額の投資を行っていることがあります。とはいえ、全社的にLinuxデスクトップを採用している大企業がいくつもあります。例えば、Amazonは独自のLinuxディストリビューション Amazon Linux 2を持っていて、AWSクラウドプラットフォームだけでなく、社内のサーバーやデスクトップの両方で使用しています。
中小企業や家庭でLinuxを使用することはずっと簡単で、ライセンスの必要が無くなり、Linuxで使用できる自由でオープンなソフトウェアの価値に気づかされる、やりがいのある経験になることでしょう。また、幾つものデスクトップ環境が利用できることもわかるでしょう。最も一般的なのは GnomeとKDEですが、他にも多くのものが存在します。どれを選ぶかは各人の好みです。
サーバーでのLinux
Linuxをサーバー用のオペレーティングシステムとして利用することは、企業分野では一般的です。サーバーはLinuxに精通したエンジニアによって保守されますので、何千人ものユーザーが、自分が接続しているサーバーを知らないことがあります。ユーザーにとってサーバーのオペレーティングシステムは重要なことでは無く、バックエンドがLinuxだろうと他のオペレーティングシステムだろうとクライアントアプリケーションに違いはありません。アプリケーションが、ローカルないしはリモートのクラウドでクラウド化ないしは仮想化されるにつれ、オペレーティングシステムは一層隠されますが、そこに組み込まれたオペレーティングシステムはLinuxである可能性が高いことも事実です。
クラウドのLinux
Linuxに慣れるための方法のひとつは、パブリッククラウドの1つにLinuxを配備することです。数あるクラウド事業者のいずれかひとつにアカウントを作成すると、さまざまなLinuxディストリビューションを簡単かつ素早く配備することができます。
Linux以外のオペレーティングシステム
信じがたいことですが、Linuxカーネルに基づかないオペレーティングシステムがあります。長年にわたりて、多くが脱落していきましたが、未だに利用可能な選択肢のひとつです。家庭でもオフィスでも。
Unix
オペレーティングシステムとしてLinuxが登場する以前から、Unix(ユニックス)がありました。Unixは通常、ハードウェアと共に販売されていました。現在でも、AIXやHP-UXといった商用Unixが販売されています。Linuxは(ある種のハードウェアでは利用できなかった)Unixに大いに触発されています。BSDファミリのオペレーティングシステムは、Unixの直系の子孫です。現在では、FreeBSD、NetBSD、OpenBSDなど、いくつかのBSD関連システムが、フリーソフトウェアとして利用可能です。
Unixは大企業で多く使用されていましたが、Linuxの成長に伴って地位が低下していきました。Linuxが成長し、企業向けのサポートも成長したため、Unixは徐々に消え始めています。元々はSunが開発し後にOracle(オラクル)に移ったSolaris(ソラリス)は、電話会社で使用されたUnixオペレーティングシステムで、キャリアグレードUnix と呼ばれていましたが、すっかり目にすることが少なくなりました。
Unixオペレーティングシステムには、次のようなものがあります:
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AIX
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FreeBSD、NetBSD、OpenBSD
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HP-UX
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Irix
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Solaris
macOS
AppleのmacOS(以前のOS X)は2001年に遡ります。BSD Unixに強く基づいており、Bashコマンドラインシェルを採用しているため、UnixやLinuxオペレーティングシステムに慣れている場合は使いやすいシステムです。(訳注: macOS Catalinaからは zshが標準シェルになりましたが、引き続きBashも使用可能です)。macOSを使用している場合は、ターミナルアプリケーションを開いて、コマンドラインにアクセスできます。Linuxと同じく uname
コマンドを実行すると、オペレーティングシステムを確認できます:
$ uname -s Darwin
Note
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ここで使用した |
Microsoft Windows
世の中のデスクトップとラップトップは、ほとんどがWindowsベースであると言えるでしょう。このオペレーティングシステムは非常に成功しており、何年もの間デスクトップ市場を支配してきました。これはプロプライエタリ(独占的)ソフトウェアであり無料ではありませんが、ハードウェアを購入したときにオペレーティングシステムのライセンスが含まれているので、簡単に選択できます。もちろん、ハードウェアおよびソフトウェアベンダー全体がWindowsをサポートしていますし、多くのオープンソースアプリケーションがWindowsで利用できます。しかし、Windowsの未来はこれまでほど明るくはありません。デスクトップとラップトップは以前ほどに売れておらず、タブレットと携帯電話の市場に焦点が移っています。この市場はiOS(Apple)とAndroid(Google)が支配しており、Microsoftが地位を獲得するのは困難です。
サーバープラットフォームにおいて、Microsoftは顧客がGUI(グラフィカル ユーザー インターフェイス)かコマンドラインのみかを選択できるようにしました。GUIとコマンドラインの分離は重要です。ほとんどの場合、古いMicrosoft ServerのGUIがロードされますが、それを使用する人はわずかです。Active Directoryドメインコントローラーを考えてみましょう。ユーザーはいつでもドメインへの認証の際にそれを使用しますが、サーバーではなく管理者のデスクトップから管理されます。
演習
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Linuxディストリビューションのすべてで使用されている共通のコンポーネントはどれですか?
CentOS
Red Hat
Ubuntu
Linuxカーネル
CoreOS
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AppleのmacOSで使われているオペレーティングシステムはどれですか?
OS X
OSX
Darwin
MacOS
-
LinuxディストリビューションとLinuxカーネルの違いは何ですか?
カーネルはディストリビューションの一部であり、ディストリビューションは便利に使うためにカーネルを取り巻くアプリケーションです
カーネルがLinuxディストリビューションです
同じカーネルを使用しているディストリビューションは同じものです
-
Linuxのデスクトップ環境は以下のどれですか?
Mint
Elementary
Zorin
Gnome
-
ハードウェアへのアクセスを許可するコンポーネントはどれですか?
ドライバ
シェル
サービス
アプリケーション
発展演習
-
コマンド ラインにアクセスして、現在のカーネル リリースを取得します。
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好みの検索エンジンを使用して、利用できるパブリッククラウドの提供者を探して確認してみましょう。AWSやGoogle Cloud、Rackspaceなどがあるでしょう。ひとつを選んで、配備できるオペレーティングシステムを調べて下さい。
まとめ
このセクションでは、広く使用できるオペレーティングシステムの違いを学びました。取り上げたものは以下の通りです:
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Linuxベースのオペレーティングシステム
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UNIX
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macOS
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Windowsベースのオペレーティングシステム
Linuxカテゴリではさらに、長期サポートのディストリビューションと短いサポートサイクルのディストリビューションに分けられます。LTS版は企業利用に適していて、短期間のものは家庭や趣味のユーザーをターゲットにしています。
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企業向けのLinuxディストリビューション
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Red Hat Enterprise Linux
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CentOS
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SUSE Linux Enterprise Server
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Debian GNU/Linux
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Ubuntu LTS
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一般向けのLinuxディストリビューション
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Fedora
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Ubuntu 非LTS
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openSUSE
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実験的なハッカー向けLinuxディストリビューション
-
Arch
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Gentoo
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演習の解答
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Linuxディストリビューションのすべてで使用されている共通のコンポーネントはどれですか?
CentOS
Red Hat
Ubuntu
Linux カーネル
○
CoreOS
-
AppleのmacOSで使われているオペレーティングシステムはどれですか?
OS X
OSX
Darwin
○
MacOS
-
LinuxディストリビューションとLinuxカーネルの違いは何ですか?
カーネルはディストリビューションの一部であり、ディストリビューションは便利に使うためにカーネルを取り巻くアプリケーションです
○
カーネルがLinuxディストリビューションです
同じカーネルを使用しているディストリビューションは同じものです
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Linuxのデスクトップ環境は以下のどれですか?
Mint
Elementary
Zorin
Gnome
X
-
ハードウェアへのアクセスを許可するコンポーネントはどれですか?
ドライバ
○
シェル
サービス
アプリケーション
発展演習の解答
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コマンド ラインにアクセスして、現在のカーネル リリースを取得します。
$ uname -r 4.15.0-47-generic
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好みの検索エンジンを使用して、利用できるパブリッククラウドの提供者を探して確認してみましょう。AWSやGoogle Cloud、Rackspaceなどがあるでしょう。ひとつを選んで、配備できるオペレーティングシステムを調べて下さい。
例としてAWSをとりあげると、Windowsだけでなく、Debian、Red Hat、SUSE、Ubuntuなど、多くのLinuxディストリビューションを配備できます。